聴覚障害者とは

聞こえの不自由な人を聴覚障害者と言います。
しかし、聴覚障害の原因や種類、聞こえの程度が様々なため、聴覚障害者を分類し定義することは非常に難しいです。
聴覚障害者は、「ろう者」、「中途失聴者」、「難聴者」に大まかに分かれますが、その人自身がどう思っているかというアイデンティティの問題となるのです。
「中途失聴者」と「ろう者」の両方を含む広義で「難聴者」という場合もあります。

ろう者

先天的に、音声言語を習得する前に失聴した人


難聴者

聞こえにくいけれど、まだ聴力が残っている人


中途失聴者

音声言語を獲得した後に、何らかの原因で、聴こえにくくなった人、聴こえなくなった人


聴覚障害の原因

先天的 聴覚組織の奇形
妊娠中のウイルス感染(特に風疹)
 etc…
後天的 突発性疾患
感染症の合併症
薬の副作用
頭部外傷
騒音
年齢を重ねる
 etc…

<挑戦>聴覚障害者を細かく分類してみる!

【解答例】
本人の認識次第で”13パターン”は存在してるかも!?
加えて、言語明瞭度、了解度を考慮すると無限に増えそうな…

健聴
or
聴覚障害
or
難聴
ろう 両耳ろう 先天性 1
後天性 2
片耳ろう 先天性 3
後天性 4
難聴 両耳難聴 先天性 5
後天性 6
片耳難聴 先天性 7
後天性 8
中途失聴 両耳失聴 両耳ろう 9
両耳難聴 10
片耳失聴 片耳ろう 11
片耳難聴 12
片耳ろう&片耳難聴 13

※出産前 : 先天性ろう、先天性難聴
 出産後 〜 言語獲得前 : 後天性ろう、後天性難聴
 言語獲得後 : 中途失聴
と表現される事が一般的らしい

聴覚障害関係の一般的な英語表記

 Hearing Impaired  聴覚障害
 Deaf  ろう、耳の不自由な 
 Hard of Hearing  難聴
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難聴の種類

伝音性難聴 ・外耳または中耳の障害に起因する難聴
内耳の感覚細胞へ充分な大きさの音が届かない状態
補聴器によって音を増幅すれば、言葉の聞き取りの充分な改善が期待できる
感音性難聴 ・内耳(音の振動を受容する器官)の感覚細胞の障害に起因する難聴 ・感覚細胞から脳へ信号を送る聴神経の障害に起因する難聴
・中枢聴覚路の障害に起因する難聴
・音は聞こえるが、何を言っているか分からない状態
・補聴器で音を増幅しても、必ずしも聞き取りが充分に改善すると限らない。
混合性難聴 ・伝音性と感音性の両者を併発している難聴
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耳の構造

混合性難聴
伝音性難聴
(音を感じ、伝える器官)
感音性難聴
(音を電気信号に変える器官)

音が聞こえる仕組み

耳介や外耳道
 ※音を拾い集める
  ↓
鼓膜
 ※集められた音によって振動する
  ↓
耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)
 ※鼓膜で得られた振動を蝸牛の中へと伝える
  ↓
蝸牛の中にある有毛細胞
 ※伝えられた振動(音)を神経パルス(電気信号)に変換する
  ↓
蝸牛神経
 ※大脳の聴覚中枢へ神経パルス(電気信号)を送る

耳の各器官の紹介とその働き

外耳(がいじ)

耳の構造のうち耳介(耳殻)と外耳道からなる
・耳介(じかい)または耳殻(じかく)
 外耳道より外に付着した皮膚と軟骨より形成される扇状の構造物
・外耳道(がいじどう)
 いわゆる耳の穴のこと

中耳(ちゅうじ)

耳の鼓膜から奥の構造で中耳腔、耳小骨、耳管からなる
鼓膜から内耳(三半規管、蝸牛、前庭)へ空気の振動を伝える働きをしている
・中耳腔(ちゅうじくう)
 鼓膜の奥の空洞状になっている部分で、この中に鼓膜に接して耳小骨がある
 鼓室(こしつ)とも呼ばれる
・耳小骨(じしょうこつ)
 つち骨・きぬた骨・あぶみ骨の3つからなる小さい骨で、
 鼓膜にに伝わった空気の振動を内耳に伝える働きがある
 外部からの振動は鼓膜とあぶみ骨底の面積比で約17倍に、
 耳小骨のてこ運動によりさらに約1.3倍増幅される。(合計で約22倍)
・耳管(じかん)または、エウスタキオ管、ユースタキー管
 中耳腔から伸びる管で鼻腔、咽頭につながっている。
 耳管の中には、たくさんの線毛が生えていて、咽頭の方に向かって動いている
 空気と一緒に入ってくるほこりや微生物は、粘膜に吸着されると、
 線毛の動きに乗って押し流され、中耳の中は清潔に保たれる。
・鼓膜張筋とアブミ骨筋
 耳小骨に付着してその動きを調節する筋肉で、
 人体の中で最も小さな筋肉である
 鼓膜張筋は三叉神経、アブミ骨筋は顔面神経の支配を受ける。
 大きな音が鳴ると、反射的にこれらの筋肉が緊張し、
 大きすぎる振動エネルギーが内耳に伝わらないように制限する。
 これを耳小骨筋反射または中耳筋反射と呼ぶ。
 反応時間は40〜160msecであるため、突発的な強大音には対応しきれず
 急性音響外傷を起こす場合もある

内耳

耳のもっとも奥にあり、蝸牛、前庭、三半規管からなる
・蝸牛
 音の振動を神経(蝸牛神経)に伝えるための構造がある
・前庭
 平衡感覚を受容するための器官
・三半規管
 平衡感覚を受容するための器官

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補聴器・人工内耳・その他について

  補聴器 人工内耳
どんな機器 ・聴こえにくくなった音を大きな音にすることで聴こえ補う機器 ・蝸牛内の有毛細胞と同様の振動を、人工的に発振させることで神経パルスを脳に送り聞こえを補う機器
メリット ・聴こえが良くなる
 (個人差あり)
・飛躍的に聴こえが良くなる
(個人差あり) 
デメリット ・不要な音も聞こえる事が多い
 (慣れが必要)
・湿気に強くない
・不要な音も聞こえる事が多い
 (慣れが必要)
・湿気に強くない
・蝸牛に穴を開けるので、一度施術をすると元に戻すことは困難
使用要件 ・41dB以上での使用が推奨される
 (国連推奨)
・伝音性難聴に特に効果有り
・感音性難聴にも個人差はあるが効果有り
・両耳ともに重度難聴で、日常生活に支障がある場合に適用される事が多い
メンテナンス ・使用開始時:調整必要
 (月1回等、個人差有り)
・電池交換:3,4日〜1週間
・定期点検:個人差有り
・使用開始時:調整必要
 (週1回等、個人差有り))
・定期点検:確認中

骨伝導法 : 準備中
BAHA法 : 準備中

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身体障害者福祉法における聴覚障害者の程度等級

日本では、聴力レベル70dB以上から身体障害者手帳の交付がある

手帳交付を受けている聴覚障害者は、全国で約36万人とみられています。
しかし、国連の世界保健機構(WHO)では”41dBから補聴器の装用が推奨される”とされており、この基準に基づくと600万人にのぼるとみられます。
聴覚障害のみの場合は、最も重度な場合の人でも障害者程度等級は2級までとなります。
ろう(あ)者は、言語障害が加わると、1級に認定される場合があります。

等級に対する聴こえの程度

等級 聴こえの程度
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの
(両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90dB以上のもの
(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級 1.両耳の聴力レベルが80dB以上のもの
(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの
6級 1.両耳の聴力レベルが70dB以上のもの
(40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
2.一側耳の聴力レベルが90dB以上
他側耳の聴力レベルが50dB以上のもの

(注)
1)同一の等級について二つの重複する障害がある場合は、1級上の級とする。
 ただし、二つの重複する障害が特に本表中に指定されているものは該当等級とする。
2)異なる等級について二つ以上の重複する障害がある場合については、障害の程度を勘案して、当該等級より上の級とすることができる。
 (身体障害者福祉法施行規則別表第5号「身体障害者障害程度等級表」より)

dBに対する聞こえの程度

dB 障害の程度 聞こえの程度 その他
0dB 健聴    
10dB 蝶の羽ばたき  
20dB 置時計の秒針   
30dB 軽度 静かな会話  
40dB 静かな昼間の住宅地 補聴器使用が望ましい(欧米)
50dB 中度 普通の会話  
60dB 静かな乗用車  
70dB 高度 騒々しい街頭 障害者手帳交付
80dB 地下鉄車内  
90dB 怒鳴り声  
100dB 重度
or
ろう
ガード下での鉄道走行音  
110dB 地下鉄走行音  
120dB 飛行機の騒音  
130dB 飛行機のエンジン音   
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コミュニケーション手段について

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中途失聴・中途難聴の原因

ムンプス難聴について

原因 : ムンプスウィルスの内耳感染
治療 : ステロイド剤・血流改善剤・代謝促進剤・高気圧酸素療法
発症について : ムンプス患者1,000人に対して1人程度?(各種調査結果有り)
         おたふく風邪の発症者が年間50万〜200万人なので、
         500〜2,000人/年が発症していると考えられる。
         ほとんどの場合が一側聴で、回復は難しいと言われる。

突発性難聴について

原因 : 不明(ウィルス感染説?、内耳循環障害説?)
治療 : ステロイド剤・血流改善剤・代謝促進剤・高気圧酸素療法・星状神経節ブロック注射など
発症について : 35,000人/年(2001年)
   一側聴が8割を占め、3割:回復、3割:難聴、3割:失聴と言われる。
             早期治療が何よりも大切!

特発性両耳性進行性感音難聴について

原因 : 不明
治療 : ステロイド剤・血流改善剤・代謝促進剤・高気圧酸素療法・星状神経節ブロック注射など
発症について : 700人/年

聴神経腫瘍について

原因 : 腫瘍
治療 : ステロイド剤・血流改善剤・代謝促進剤・高気圧酸素療法・星状神経節ブロック注射など
発症について : 1,000人/年

心因性(機能性)難聴について

機能性難聴の原因 : 精神的ストレス
治療 : 精神的ストレスの負担軽減、心理療法

薬剤性難聴について

薬剤性難聴の原因 : 抗生剤(ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン)、利尿薬(フロセミド)、抗がん剤(シスプラチン)、アスピリン
治療 : 副作用が出たら、ただちに薬剤の投与を中止する。
      ステロイド剤・血流改善剤・代謝促進剤

騒音性難聴について

騒音性難聴の原因 : 騒音
治療 : 血流改善剤・代謝促進剤

老人性難聴について

老人性難聴の原因 : 加齢
治療 : 補聴器の装用


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聴覚障害者の悩み、その他色々

一般的に言われる事が多い、聴覚障害者の悩み

音声に関して

 自分の声も人の声もビリビリと歪んで聞こえる場合もある
 機器を通した音は、オリジナル音でないから誰の声か分からなくて困る
 電話・アンプ等、機器から出てくる音が苦手な人が多い
 母音が同じ語は区別がつきにくい(たばこ≒たまご等)
 人の声の母音だけが聞き取れる
 発音が徐々にうまく出来なくなっていく人が多い
 聴覚障害者は我が子の言語発達が心配する人が多い
 人によって聞き取りやすい声と聞き取りにくい声が違う
 特定の音(周波数、大きさ)に対して過敏になり、辛く感じる人もいる
 音が聞こえると言葉が聞き取れるは違う事を理解してもらう事が難しい
 音の感じ方が聴者と違うため、音色などどんな音なのか分からない
 自分の声が聴こえないため、その場に適切な大きさか分からない
 聴覚障害者の全員が手話ができると思われる事がある
 たくさんの音がある所では聞き取る、聞き分けることが困難である
 たくさんの音がある所では、どこから音が出ているかが分からない

コミュニケーションに関して

 聞き直しても聞き取れない事がある事を理解してもらえず辛い
 聞き直すことで互いに不快な思いをする事があるので遠慮する事が多い
 呼びかけに気付かず、活動中に孤立する事がある
 呼びかけに気付かず、無視したと誤解されることがある
 補聴器をつけても全てを聞き取れない事を理解してもらう事が難しい
 周囲の空気に配慮し、聞こえていないがうなづく、笑っておくことがある
 周囲の会話が聴こえにくいので、気付かず他人の会話に割り込んでしまう事がある
 聞こえたふりをすることで、相手に誤解を与えてしまう事がある
 口話が出来ても聞こえない・聞き取れない事を理解してもらう事が難しい
 初対面の人とのコミュニケーションにストレスを感じる事が多い
 聞こえない事、聞き取れない事で誤解される事が多い
 同世代、近い地域で聴覚障害の事を共有できる人を見つける事が難しい
 聴者同士の会話には入りにくく、疎外感を感じる事が多い
 口の形で言葉を読み取ろうとする際に、手やマスクで隠れていると困る
 聴覚障害の事を理解しようとしてくれる人を見つけるのが難しい
 聴覚障害の事を共感できる仲間がいると不安が減る事を知らない人もいる
 身近な人には、早めに聴覚障害の事を伝えている方が良い
 補聴器は万能であると思いこんでいる聴者が多いがそうではない

生活の場面で

 見た目で聴覚障害を持っている事が分からない
 聴覚障害の事を伝えても忘れられてしまう
 距離感・方向感覚が分からない人が多い
 生活音(非常ベル、インターホン、電子レンジ等)が聞こえなくて困る
 歩道、車道での接近音が聞こえないので怖いと感じる人が多い
 中途失聴者で失聴したばかりの人には、めまいが生じている人が多い
 片耳失聴の場合、障害者手帳をもらえない事も多い
 気候、天気によって体調が悪くなる人が多い
 失聴した事に、体がその状態に慣れるのに半年以上かかる事が多い
 病院以外で、聴覚障害について、どこに相談にすればよいか分からない
 電話応対や会議など就職・就業の際に困る人が多い
 聴覚障害は個々人で程度が違うので自分のアイデンティのありかに苦悩する
 公共交通機関で電光掲示、字幕案内の整備が整っておらず困る事が多い
 聴覚障害者用機器は手帳がない場合全額負担なので購入を躊躇う人が多い
 公共交通機関の遅延情報が分からず困る事が多い
 聴力検査の結果に一喜一憂する事が多い
 聴力検査の一種である語音了解度検査の認知が低い
 聴覚障害者のほとんどが耳鳴りを感じている

役所、病院、銀行等の公共の場で

 呼び出しの声が聴こえない、聞き取れない
 医師の説明が聴こえない、聞き取れない
 聴こえない事を伝えても、信じてもらえない
 聴こえないので、書いて欲しいとお願いしても筆談してもらえない

各種協会に関して

 中途失聴者は協会との接点が少なく、ある事を知る術もあまりない
 耳マーク自体の認知度、理解度が低い
 耳マークを掲示していても、聴覚障害に対する理解は低い

その他…両耳効果に関して

?両耳で聞くことによって、音の方向感や立体感が増す
→聴覚障害がある場合、音の方向感や立体感が得られにくい
?両耳では騒音の中でも必お湯な音声を聞き分けられる
→聴覚障害がある場合、なかなか困難な状況が多い
?両耳の最小可聴域値は3dBほど良い。

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